車椅子バスケの魅力~医療関係者としての視点~【理学療法士 神保 礼】

               

埼玉みさと総合リハビリテーション病院 理学療法士 神保 礼

私が初めて車椅子バスケを知ったのは、小学生の時に父親に連れられて選手権(※1)を見に行ったことがきっかけでした。

タイヤと床の擦れる音とニオイ、車椅子同士の接触音、そして何より凄いスピードでプレーする選手達に、何の知識もない小学生が感じたワクワク感。「スゴイ!」「カッコイイ!」と。

今思うと全ての原点がそこにあった気がします。車椅子バスケットボールという競技に魅了された瞬間でした。

 

その後PT(※2)となって仕事に慣れてきた頃、自分の中にふと障害者スポーツ分野に関わりたいという気持ちが出てきました。

種目を考えていく中で、学生の頃から色んな種目の観戦やボランティア活動を行っていましたが、やっぱりこれに関わりたいと思ったのが上記の思い出が衝撃的だったこともあり、車椅子バスケでした。

 

障害や身体機能についての知識を得て、競技に触れていく中で、改めて感じたことはやっぱり「スゴイ!」「おもしろい!」ということでした。

目の前で繰り広げられていることは、学生時代に習った教科書の範ちゅうを大きく越えていて、選手たちが障害の程度に応じて動くのが難しい部分を、身体の他の部分なり、チェアスキル(※3)なりで代償(カバー)してプレーしている姿を見るたびに、ワクワクドキドキ衝撃を受ける日々です。

その中で、車椅子バスケをどんどん好きになっていく自分が居ます。

 

現在では、競技の中でも特にクラス分け(※4)の分野に興味を持ち、資格取得のため勉強しているところです。

この分野は、選手の動きに合わせた持ち点をつけることを担っており、動作分析を仕事としているPTはじめ、医療関係者が多い分野でもあります。

付けられた点数いかんで選手の出場機会が変わる可能性もある、責任のある役割です。

車椅子のセッティングから動きに至るまでを観察するのですが、まず選手が重要視しているプレースタイルによって車椅子のセッティングが全く異なっています。

普段車椅子を仕事で使用している専門職から見ても、そのマニアックな違いがとても面白いと感じています。

それに合わせての選手達のプレーを見て、「え?!そんなことも出来ちゃうの?!」という驚きは、この競技を観て動作分析していく中での嬉しい衝撃です。

 

もう1つ自分がPTであるという利点を生かせる分野として、普及(導入)の面が上げられます。

現在、車椅子バスケの競技対象となるのは、下肢に障害がある(日常的に車椅子を利用している)人だけという認識を持たれている方も、多いのではないでしょうか?

しかし、実際のところは切断、股・膝関節が人工関節、膝の靭帯損傷等、一見怪我をしていることが分かりずらいような最少障害の選手。

また、脳梗塞・出血等で半身に麻痺のある選手も、競技の対象となり活躍しています。

先天的または後天的に何らかの障害を負っても、スポーツをしたいと考えている方に、職業柄多く遭遇します。

その際に「こんな種目もあります」という情報提供、選択肢の拡大に一役かえたらというのが、現状の私自身の課題であると思っています。

 

最近では、パラリンピックの予選が日本で開催されたこともあり、TVでの中継数が増えたり、漫画の影響で、競技に興味を持つ人が増えていると感じています。それはとても嬉しいことです。

興味を持った方には、ぜひ生で観てその熱を感じて頂きたいと思っています。プレーのスピード・連携を取る選手達の声等の臨場感は会場に来てこそ味わえる楽しみです。

合わせてお近くの体験会等に参加して頂き、競技に触れる機会を持って頂けたら嬉しいです。

 

※1:内閣総理大臣杯争奪 日本車椅子バスケットボール選手権大会のこと(毎年GWに東京体育館で開催されている国内の最大の大会)

※2:Physical Therapist理学療法士(リハビリの専門職)の略

※3:車椅子の操作技術のこと

※4:バスケに関しては、疾患・障害の種類・重さに関係なく公平な出場機会をという観点から、「持ち点」というものがつけられている。障害の重い選手程低い点数となる。コートに入る5人の合計点数が14点以下でなくてはならない。(資格とは:日本車椅子バスケットボール連盟のクラス分け資格)

障害者の余暇と就労の充実に向けて

これまで私たちは重度障害者の余暇の充実のため、障害者スポーツイベントの開催や、障害者スポーツのガイドブック制作などを通じて、障害者スポーツの普及活動を行なってきました。
2016年4月に法人を設立し、参加者も協力してくれるスタッフの数も増えてきましたが、財源が都などの助成金がメインであるために活動を拡大していくことが難しくなってきました。また、障害者の方々には、余暇だけではなく、就労意欲を持った方々も多くいらっしゃるため、就労機会を作りたいという思いがありました。

これまでも重度障害のある方々で就労意欲のある方は多くいましたが、通勤が困難なために就労できないという課題を抱えていました。この課題はリモートワークにより解決できるということが言われてきましたが、企業側でリモートワークが浸透していないためになかなか進みませんでした。

コロナの影響により企業側でのリモートワーク環境の整備が進んだこともあり、いくつかの企業様からリモートワークによる重度障害者の雇用に関するお問い合わせをいただくようになりました。
今後さらに「リモートワークによる重度障害者の就労支援」を広げていくため、この度、新たに法人「株式会社CMU Holdings(コミュホールディングス)」を設立することにいたしました。
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