常葉大学 健康科学部 静岡理学療法学科 川田教平
今回は、シーティングが姿勢や動作に及ばす影響について考えてみます。
一般的に日常生活の中で座っていることは多いです。しかし、不適切な座位姿勢は、多くの問題を生じると言われています。いくつかの問題の原因と考え方を理解していきましょう。
人が車椅子または椅子に座った状態を意味します。
身体的・社会的に最適化することで、車椅子使用者のQOLを向上させることを目的に行われ、本人は勿論、生活を支援する介護者や理学療法士、作業療法士、業者等との協同作業で初めて最適化され、生活の中で具現化されていきます。
一般的に理想的な座位姿勢とは、図1のような姿勢を指します。しかし、時間の経過とともに、図2のような姿勢になりやすいです。我々は常に重力の作用を受けており姿勢を変化させますが、座り直しができないことが問題となります。そのような場合、車椅子移動や作業を考慮すると、身体を安定させるために何らかの支持が必要となります。
図1.理想的な座位姿勢
図2.時間経過による変化
車椅子上で姿勢が崩れる要因には、車椅子の問題が多いとされています。
身体寸法と車椅子寸法の不適合や背もたれや座面の撓み(図3)等が代表的なものです。
図3.背もたれと座面の撓み
姿勢の崩れは、褥瘡や脊柱の変形、関節拘縮を発生しやすくなります。
また、胸郭が潰れた姿勢では呼吸しづらく、視線も下がりやすいです。視線を上げようとすると頚部伸展し、誤嚥しやすいため危険です。(図4)。
図4.車椅子上の様々な姿勢の崩れ
座位能力(座って両手を離せるか)を知ることで、どのような支持を持っている車椅子が必要かを簡単に予測できます。
共通していることは、適切な車椅子寸法や支持機能をもつ座・背クッションを使用することです。
座位能力が低下するほど、支持する箇所は多くなり、場所は個々で変化します。
図5.座位能力と車椅子の適応
図6に示すように、骨盤の位置が上肢や体幹の動きに影響を与えます。
図6.骨盤位置による上肢体幹の動きの変化
車椅子座位でも同様に考えることができます。
骨盤や体幹の安定化には図7、8に示すような工夫が必要と言われています。
図7.骨盤安定化の工夫
図8.体幹安定化の工夫
また、体幹や上肢の位置を調整することで、車椅子操作が可能となる方もいます(図9)。
図9.実際の調整(一例)
車椅子乗車姿勢の崩れの原因は車椅子にあることが多いです。
車椅子の選定と調整には、本人や介助者のニーズ、身体状況、生活環境等に合わせる必要があり、その最適化には時間的評価も必要です。
調整方法は数多くありますので、個別の対応方法については、専門家と協同してよりよいシーティングシムテムが構築できるとよいです。