特定非営利活動法人みなづき会保木間作業所 作業療法士 精神保健福祉士 石渡悟士
精神障害の特徴は「強い不安や緊張、自信喪失」それに伴う「社会経験の不足」などです。
この障害の運動指導を行う時の課題は「きっかけ作り」。どのような運動でもすすめてください。
サポートのポイントは「充実して楽しむこと」や「経験を通こと」などです。
精神障害者の方は主に統合失調症や躁うつ病などの「心の病気」を抱えた方々です。
発症する原因について詳細は解明されていない部分もありますが、生活環境の大きな変化や人間関係などのトラブル、あるいは大きな挫折などによって、心に強い「ストレス」がかかったときに心が耐え切れなくなり「心の病気」にかかると考えられています。
障害として「強い不安」「自信の喪失」「マイナス思考」「自分の殻への閉じこもり」などがあります。
精神的な不安定から食事や睡眠などの生活習慣の障害につながることも多いです。
精神科の薬を飲むことで心を落ち着けることはできますが、根本的な解決には良い生活習慣や前向きな考え方に向かうような支援が必要になります。
その一方で心の障害なので障害者であるということは見た目にはわかりにくく、本人の意向で障害を公表していないケースも多いので支援の手が行き届きにくくなってしまうことも多くあります。
サポートする場合の「課題となるポイント」は2つあります。
精神障害者はトラブルなどがあったことで「自信がない」「またトラブルに会うのが怖い」「未経験のことはとりあえずやめておこう」といったように主体的に動くことが苦手な方が多いです。
そうなると「自分の殻」に閉じこもってしまい、特に新しいことを始めるということはかなり勇気が必要なこととなります。
主体的な行動が苦手なことで社会との接点が少なくなる方も多く、極端な場合「不登校」「引きこもり」数年~数十年単位の「長期入院」など更に接点を少なくするケースもあります。
そのため、学校や社会で学ぶ集団行動のルールや人間関係を築くプロセスなどを「理解していない」あるいは「理解していたが長いブランクにより忘れてしまう」ということもよくあります。
この社会経験不足が自信喪失を深めてしまい「知らないから自信がなくやらない」という流れに陥りがちなケースも多いです。
結果以下のような負のスパイラルが起こりがちなので、これを変える必要があります。
精神障害によるスポーツの制約はありません。
私の所属する保木間作業所ではバレーボール、ヨーガ、ボウリング、登山、ウォーキング大会への参加などを行い、大半の利用者の方々が参加しています。また、施設同士のスポーツ交流なども行われています。
例えば東京都の精神障害者を支援する施設で組織する「東京会議」ではソフトバレーボール大会やフットサル大会が毎年行われています。
特にバレーボール大会は32年にわたる開催となり、チーム数も毎年約60チームを数える盛り上がりを見せております。
また、会場が各スポーツで世界大会の試合会場にもなる東京体育館で行われるため、参加者にとっては貴重な経験となっています。
全国の精神科の病院や精神障害者を支援する多くの施設で、スポーツのプログラムを取り入れています。
もちろん健常者の方とスポーツ仲間の方も多くいます。
始める際にどうしても自信がなかったり不安が大きかったりする場合に「第一歩」を踏み出す勇気が必要になります。
きっかけ作りをあきらめずに多方面から継続的に行ってください。
また、私の経験上ですが「スポーツをする=うまくできないといけない」と思って始められない方も多いです。
始める際は「うまくやる必要はない」「最初は見学や応援だけでも」と敷居を低くすることもあわせてお願いしたいと思います。
一度始めてしまえば「何故あんなに拒んだのだろう?」と本人も周囲も不思議な程楽しんでいるケースも多いです。
スポーツによって身体の健康の向上はありますし、「ほどよい疲れ」が睡眠などの生活習慣改善につながります。
心の面でも「ストレス発散や達成感を得ること」「仲間との分かち合う充実感」などが前向きな考え方に繋がるきっかけになります。
といったスポーツに不可欠な社会経験も積むことができます。
だから出来ることは準備なども積極的に働きかけましょう。
これらをふまえて次のような好循環へと導くことで社会生活を送る上での能力が向上し、トラブルなどにも対応できる力も自然と身について、人生の次のステップに主体的に向かうことがます。
下記に示す好循環を生み出す支援が理想です。