障がい者スポーツとは?目的・意義と障がい者スポ―ツにおける課題

               

こみゅスポ研究所 所長(代表理事) 塩田琴美

障がい者スポーツとは?誰が参加するもの?

“障がい者スポーツ”という言葉から、障がい者スポーツは「障がい者だけが参加するもの!?」と感じている方は、多いかもしれません。

しかし、障がい者スポーツの多くは、本来が”Sport”という言葉がもつ語源の下、誰もがスポーツを“楽しむ”ことが出来るようにルールや様式が変更され作り出されてきた背景があります。

そのため、誰もが参加可能で楽しめる本来の”Sport”の在り方に近い形と言えるでしょう。障がい者スポーツの競技の中でも、ブラインドサッカーのフィールドプレイヤーは視覚に障害を有した方でも、キーパーは晴眼者(健常者)であったり、健常者の大会の参加を認めているなど、障害の有無によらず参加の機会は大きく開かれているのです。

また、人は年を取ることに筋力や感覚系は衰え、高齢になればなるほど、有病率は高くなります。約80%近くの高齢者は何らかの疾患・障害をもつと言われています。

そのために、多くの方に見合った形で参加でき、楽しみながら生涯に渡ってスポーツを親しめる環境作りの重要性も増しています。障がい者スポーツは、触れる機会が少ないだけで、世代・障害の有無を問わず誰もが参加可能で楽しめるものです。

障がい者スポーツの目的と意義

障害を有した方でも定期的な運動習慣(体を動かす機会)をもつ事で個人としての心身機能の向上、疾患憎悪の予防だけでなく、社会的にも良い影響を与えます。無理のない目標をたて、自分が楽しめるものからはじめてみましょう。

そもそも障害・障害者とは?

制度上において、障害、障害者の呼称は定義はなされていますが、人を区分することは、一般的に難しいことのように考えています。

日本においての障害者の定義は、厚生労働省が定めた障害者基本法の中に「身体障害・知的障害・精神障害(発達障害を含む)、その他の心身の機能障害があるため、継続的に日常生活、社会生活に相当な制限をうける者」とされています。

また、障害特性においては、法律上は「身体障害」「知的障害」「精神障害 」の3つに区分されます。更に、身体障害は、「肢体不自由」、「平衡機能障害」、「音声機能、言語機能または咀嚼機能の障害」、「内臓の機能障害(内部障害)」に分けられます。

主に障がい者スポーツの場面においては、各競技によってはクラス分けとなる機能分類(クラシフィケーション)と呼ばれるものがあります。

こうした障害特性を理解し、スポーツを行うことや推進を図ることは、障害を持った方の機能を高め、リスクに配慮した形で安全にスポーツの実施が可能となります。

障がい者のスポーツの実施率の低さと、理解・環境・ルール・人材不足などの課題

文部科学省「体力・スポーツに関する世論調査」(2013)によれば、成人全体のスポーツ実施率(週1回以上)は、平成25年度 47.5%に対し、障害者(成人)のスポーツ実施率(週1回以上)は、18.2%に留まっています(平成25年度)。

週3日以上ではさらに低く、8.9%、と一桁台に留まっていると報告され、障害者におけるスポーツの実施率は低いことが分かっています。

また、海外の報告では、身体に何らかの障害が有している方においては、1日の中で多くの時間を座って過ごす“座りすぎ”とされる健常者のほぼ3倍近く以上も“座りすぎ”の状態であることも示されています。

そのため、障害を持った方の不活動の状態は、極めて深刻であるとされています。

しかし、障害を有する方の運動・スポーツ実施の低さの問題は、個人的な問題のみならず障がいに対する理解面、情報環境の未整備、施設の不足、疾患や障がいを持った方向けのガイドラインが存在しない他、指導者・ボランティアの不足など様々な要因が複雑に絡み合っているといえます。

そのために、個人の環境に合わせたサポートや対処法などを検討し、運動の実施や推進を図ることが望まれます。

障がいをもった方が運動することの意義

障害を有した方の身体活動(身体活動:生活活動、運動・スポーツを含む)の効果については以下の図に示しています。

身体機能面に対する効果については、障害特性に由来する部分が大きいといえます。特に、自分の意思で動かすことが困難な場合には筋の萎縮、関節を構成する組織なども硬くなりやすく、関節の可動範囲も狭くなっていきます。

また、障害を有した方は体を動かす機会が少ないために、疾患・障害にはよらない部分で廃用性の機能低下、生活習慣病も進行しやすくなり、2次障害も予防をしていく必要があります。

また、スポーツ活動の参加は、こうした活動の参加がない・低い方と比較し、精神的にも良好であり、自尊心や自立度も高いとも言われています。

また、社会的地位としてもリーダーシップをとる立場に存在し、社会への貢献度も大きいとも報告されています。

このように障害を有した方がスポーツに参加することは、心身機能の向上といった個人への効果のみならず社会にとっても大きな意義を果たすといえます。

障がい者スポーツの始め方。課題は“どうやってスポーツをはじめるか”

スポーツを始めようと思っても、日常場面において同じような障害・機能特性を持つ方が、スポーツを行っている場面などに遭遇する機会はほぼ少なく、きっかけを作りにくいのが現状です。

そのため、スポーツを実施する上で一番の課題が、“どうやってスポーツをはじめるか”にあると思います。

特に、障害を有した方では、自分に運動やスポーツという言葉は合わないし、体を動かす事が嫌いと思う方も多いと思います。

もちろん専門家に聞くことも大事ですが、まずは身近な人に相談をしてみたり、周囲で運動・スポーツをやっている人に聞いてみましょう。

口コミから始めるきっかけを掴んだ人も多くいます。

また、以下の図や各障害に応じて出来るスポーツの記事にある“体を動かすことをはじめてみよう”を参照に、あなた(対象の方)にとっての体を動かすこと(運動・スポーツ)とは何か、メリットやデメリット、不安に思う事を挙げてみてください。

体力に不安などを感じる場合には、生活の中でテレビを見ているだけの時間や家にいる時間を減らしてみたり、無理のないことからはじめてみて下さい。その効果や普段とは異なる気持ちや楽しみを感じてみて下さい。

その上で、もっと地域での活動や競技に触れてみたいと感じたら、ホームページで検索をしてみたり、各地域で行われているイベントや教室に足を運んで間近で観たり、興味のあるスポーツを体験し、雰囲気を感じることも良いでしょう。

こうした行動も既にスポーツの参加につながっています。

障害者の余暇と就労の充実に向けて

これまで私たちは重度障害者の余暇の充実のため、障害者スポーツイベントの開催や、障害者スポーツのガイドブック制作などを通じて、障害者スポーツの普及活動を行なってきました。
2016年4月に法人を設立し、参加者も協力してくれるスタッフの数も増えてきましたが、財源が都などの助成金がメインであるために活動を拡大していくことが難しくなってきました。また、障害者の方々には、余暇だけではなく、就労意欲を持った方々も多くいらっしゃるため、就労機会を作りたいという思いがありました。

これまでも重度障害のある方々で就労意欲のある方は多くいましたが、通勤が困難なために就労できないという課題を抱えていました。この課題はリモートワークにより解決できるということが言われてきましたが、企業側でリモートワークが浸透していないためになかなか進みませんでした。

コロナの影響により企業側でのリモートワーク環境の整備が進んだこともあり、いくつかの企業様からリモートワークによる重度障害者の雇用に関するお問い合わせをいただくようになりました。
今後さらに「リモートワークによる重度障害者の就労支援」を広げていくため、この度、新たに法人「株式会社CMU Holdings(コミュホールディングス)」を設立することにいたしました。
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